パリの下町に、良心的な価格で美味しい料理を出してくれるビストロがありました。
そこでいただいた料理のいくつかは我が家の秘伝レシピにもなっているくらい。
お店のスタッフであるパトロンさん(経営者)もシェフさんも感じが良くて、とても気に入っていたのです。
でもある時、シェフさんが変わって、別の方になっておりました。
そのシェフさんのお料理も繊細で美味しかったのですが。でも。
以前のシェフさんの料理は、すごく繊細というわけではないのだけど、昔ながらのお味と今のお味が程よく融合していて、量も適度にボリューミィーでパリのザ・ビストロ料理。
それが魅力だったのです。
で、あのシェフさんはどうしたのだろう?
別の店に移ったのかな?
それとも自分でお店を開いたのかな?
なんてときどき思っていたのです。
そしたらある時ネットを見ていたら、たまたまそのシェフさんの名前がわかり検索すると、今いるお店がわかったのです。
場所はパリのハイソな中心地で観光客がとても多いカルティエ。
その界隈で雑貨や家具、食材まで手掛けるグループ会社がレストランも開いていて、シェフさんはそのレストランを任されていたのです。
それを知った時は、またあの料理が食べれる!と嬉しくて、すぐ予約。
そして数日後に行ってみたのです。
お店はいかにも観光客が好みそうなパリ風おしゃれモダンな雰囲気。
まだ早い時間だったので、お客さんはほとんどいなくて、私はテラス席に座りました。
前もってお店のHPを確認したらランチメニューがあったので、それにしようと決めていたのですが、渡されたカルト(メニュー表)はアラカルト。
しかも前菜もメインもかなりお高め。
スタッフさんにランチセットはありますか?
と訊ねると、今はもうやっていませんとのこと。
フランスの飲食店はHPを頻繁に更新しないところが多いので、こういうことはよくあること。
なのでしかたないので、アラカルトの中から前菜とメインをお願いしました。
その間、店内を見ていると、いましたいましたあのシェフさんが。
間違いなく彼です。なので、ランチセットはなかったけど、期待に胸を膨らませました。
そしてお願いしたお料理がやってきたのです。
まずは前菜は野菜のラビオリだったのですが、盛り付けがなんだか微妙でちょっと雑な感じ。
お味は美味しかったのですが、量も少なくてお値段を考えると、首をひねってしまいます。
メインはマグロのタルタルに野菜添えで、ちょっとジャパニーズスタイル。
これも盛り付けが微妙で、お味は日本人の私にはまったく新鮮味のないもの。
下町ビストロではあんなに美味しい料理を作っていたのに、ここまで変わるとは。
もうただただ残念でした。
どうしてこうなったのかを考えてみると、私の勝手な想像ですが。
大きな宣伝をしなくても高い値段に見合わない料理を出しても、ある程度のお客さんが見込める場所。
(実際私の後やって来たお客さんは皆ドイツ人とか英語圏の人でした)そこでグループ店を展開しているという経営側の考えが大きいのだろうな、と。
お客さまを喜ばせるとかいうことよりとにかくお金的な感じでしょうか。
シェフさんももしかしたら本望じゃないかもしれませんが、雇われている側。
しかたなく惰性で料理を作っているのかもしれません。
楽しんでるのがまったく感じられない雑気味な料理から、そんなことを思ってしまいました。
で、もう2度とここに来ることはないな、と残念だけど思いました。
高めでもあの下町ビストロのような美味しいお料理だったら、がんばってたまに来たいと思ったかもなのですけどね…。
ところで最初に、お値段以上の美味しい料理を提供してくれるビストロがありました、と過去形で書いたのですが。
その下町のビストロも閉店してしまったのです。
コロナ前だったのですが、やはりお店の経営というのは難しいんでしょう。
好きだったお店がなくなるって、好きだった味が食べれなくなるって。
とても寂しいものです。
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