いきなりの暑さで何となくだるかったんだけど、
こんな中途半端なだるさに負けてたまるかい、思って、
隔週日曜マルシェに向かったこの日のシュワ子&いつでも体力バッチシの男。
チヤリンコも歩くのも超自分ペースの男。
みんなが自分と同じ体力じゃねぇんだぞ、
と日頃からそこのところは旦那に対して納得いかず、
インフルエンザの時はあんなにへたってたくせにさ、
とシュワ子の中をちょびりイジワル子が過る、
そんな夏のはじまりの日曜の朝。
と、爽やか気味に書きだしたものの、
昨日のカニキュール夜の暑さがこたえて普段にも増して頭がまわらないシュワ子。
思わず冷えたロゼのボトルを開けて飲み干したパリ熱帯夜。
そのあと小腹が減りカニカマ山葵でごはんを食べたパリ熱帯夜。
しかし今日は少し湿ってはいるものの爽やかな風が吹きぬけている。
夏の光の中を通り抜け、
緑の小立ちをくぐり抜け、
マグロのカマ(5ユーロ)の前を通り過ぎ、
たいして美味しくなかったイタリア惣菜屋の前を通り過ぎ、
ああ、そうさ、エマちゅんに辿り着いたさ。
そしていつものシュワシュワ(一杯2ユーロ)。
もういいのだ。何も求めないのだ。
ただここでこうしてささやかな時間を過ごせればいいのだ、
と思ったその時、
エマちゃんがまっすぐシュワ子を見つめ聞いてきた。
前から聞きたかったの。
あなたはどこの人?
突然訊ねられたけど戸惑わないシュワ子。
ジャポンよ。
そうなのね。私はヴェトナムよ。
えっ?
おじいちゃんがヴェトナム人なの。
ええっ!
自分の身分証まで持ってきてくれて、
ヴェトナムのファミリー名を見せてくれたエマちゃん。
でもみんなポルトガルとイタリア?って言うの。
でも私はヴェトナムが入ってるのよ。
誇らしげに言うエマちゃん。
ポルトガルもイタリアもまったく関係ないわ。とでも言いたげに。
そして今度はこう聞いてきた。
フランス生活楽しい?
ええ、とっても。
ほんと?日本の方がずっといいんじゃない?
この時は戸惑うシュワ子。
するとエマちゃんは別のお客さんのシュワシュワを作りにあっちへ行ってしまった。
シュワ子とシュワ子旦那はシュワシュワを飲み干し、
すっかり慣れて1人で切り盛りするエマちゃんに、
ありがとう、と声をかけマルシェをあとにした。
カニキュールとアジアの風が交差した7月のある木曜日。
あ、いやちゃう6月の日曜日。
いややっぱ7月の木曜日か。
でもこの日は6月の日曜日。
ま、どっちででもいいや。
エマちゃんとはじめて言葉を交わしたんであった。
完璧に名前を知ってしまったことは胸の奥に秘めておくとしよう。