パリの語学学校は、フランス料理を学びにパリに来た日本人料理人さんたちがたくさんいました。
多くの場合、まず学生VISAでフランスに来て、学校に通いながら、レストランで修業する人が多いからです。
そんな中で出会ったのが、東京のフレンチレストランで働いていた女性料理人で、私は実際にはその東京のお店に行ったことはないのだけど、お店の前はよく通っていたので。
ええ!あそこで働いていたの?という話になりました。
それほどよくしゃべるタイプではなく、パリにいることに浮かれている感じも一切なく、真面目で。
そんなところに好感が持てる人でした。
その出会った頃に彼女がよく言っていたのが、パリがどうしても好きになれなくて、1日も早く日本に帰りたい。
でも料理修業のために来たし、親も応援しているので、がんばってパリにいる。
という事でした。
そこまでパリが好きじゃないという人に私は会ったことがなかったので、その言葉がとても印象に残りました。
彼女も含めた何人かで食事に行ったりもしたけど、その後、私はニースに移ったので、会うことがなくなりました。
なのですが、私がニースからパリに戻ってきてすぐ、パリの端っこカルティエのマックカフェで偶然、彼女と再会しました。
その時、彼女は、以前働いていたレストランを辞めつなぎで日本レストランで働いていて、その日これから新しいレストランに面接に行くところ。
私の方は、まだ住む場所が見つかっていなくて、安ホテルに宿泊しながら、マックでアパルトマン探しをネットでしていたところ。
で、1年以上ぶりにあって時間があったのでいろいろ話したのですが、その時に彼女が話していた事が、またまた印象的だったのです。
それは、今は日本のレストランで働くよりフランスのレストランの方が気持ちがラクになったという事。
理由は、フランスのレストランは全体責任がなく、たとえば自分が前菜を担当していれば、その前菜で何か問題があった時はもちろん自分の責任になる。
でもメインやデザートに問題があれば、その責任はそれぞれの担当者の責任で、他の人はまったく関係ないのだそう。
日本で働いていた時は、料理に何か問題があれば全員の責任になるので、いつでもまったく気が抜けなかったのだそう。
シェフオーナーはとてもいい人だったけど、正直、朝起きた時、気が重くて仕事に行くのがいやで辞めてしまいたい、と何度も思ったことがあったそう。
でもフランスでは仕事に行きたくないという日がなく、今はすぐに日本に帰りたいという気持ちはなくなったとの事。
以前は、あんなに日本に帰りたいと言っていた彼女の心境の変化が、とても興味深かったのですよね。
そして、日本のレストランとフランスのレストランの責任の違いも、やはり興味深かったのです。
全体責任って、なんか日本に今だに残る精神論と共通するものがあるように感じるのですが、正直、私は昔からそういうのが超苦手。
なので彼女のその気持ちが、なんかちょっとわかるような気がしました。
で、お互い、レストランの面接が上手くいくといいね、アパルトマンが’見つかるといいね。
と話して、再会を約束して別れたのです。
そして、彼女は無事、レストランの面接をパスし、私もアパルトマンが見つかり、少し経ってから再会しました。
場所は彼女が働くそのレストランで、予約が必要な人気店。
共通の知り合い3人で食事に行きました。
オーナーシェフさんが特別にサービスをしてくださって、彼女の作ったスペシャル盛り合わせデザートもいただいて、とても良くしていただき、美味しく楽しい時間を過ごしました。
それから1、2度会ったと思うのですが。
共通の友人の近況を話したり、シェフさんは(彼女の働いているレストランの)たまにイライラが爆発するので、その時は気を遣う、と話していたり。
いつかは日本に帰って、お店を持ちたい、なんてことも言っていました。
その後のことはわからないのですが。
夢を実現しているかな。
それとも、腕が良くて信頼される人だったと思うので、フランスのどこかのお店に引き留められているかな。
なんて思ったりしております。
彼女のように、日本でもフランスでも(海外でも)経験を積んだ人が日本に帰って、仕事スタイルも含めフランスの良いところも、そしてもちろん日本の良いところも含め、経験を伝えていくのは、とても大事なことだな、と思います。
それが、これからの日本に大きなプラスになっていくんじゃないかな、と。
海外に出てみた1人として、今、思っております。
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コメント
コメント一覧 (6)
フランスでは、全体で責任を取るという考え方の職場は無いようですね。
責任はそれぞれ、それを直接担当した物のみの責任なんですね。
一方、日本では働く事は、辛いみたいですね。
仕事に行くのも重い日が多いんですね。
日本って働く人にとってキツイ環境ですよね。
連帯責任がある職場は完全にブラック職場ですね。
それは、学校現場でも日常的にありますね。
一人の子が失態を犯すと、そのグループ全体が罰を受けるという理不尽な罰です。
本人でない人まで罰を受けるのは変です。
誰かのせいで罰を巻き添えで受けた人達よりも……
自分のせいで他の人まで迷惑をかけてしまった失態を起こした本人が一番辛いのです。
理不尽な連帯責任は嫌ですよね。
……とはいえ、一番効果があるのも確かです。
自分のせいで他人を罰の巻き添えにしてはいけないと思うから、真面目に仕事をやる事になりますよね。
特に日本人は他人様に迷惑をかけてはいけないという気持ちが強い為、
決まりや物事をきちんと取り組ませる効果は抜群と言えます。
効果が高いのは認めるけど、ブラック体質を生みます。
江戸時代の五人組みたいな5軒を1組にして責任を取らせる制度があり、これの名残がありますね。
戦前では「隣組」という名前になり、戦後にもそれは脈々と受け継がれている考えですね。
自分が罰を受けるのは平気でも他人が自分のせいで罰を受けるのは辛いです。
自分が嫌われるので嫌なものです。その心理を巧みに利用していますね。
当初はパリに馴染めない人がフランスのレストランで
実際に働いてみてフランスの方が気持ちが楽でいられる事を知ったんですね。
日本はストレスがたまりやすい社会と言えますからね…。
その料理人の女性も日本ではずっと、他の人に迷惑をかけたくない、という思いで働いてきたのだろうな、と思います。
自分のせいで誰かが巻き添えになるって、肩身が狭いですよね…。
そう言えば子供の頃は、班全体の責任とかありましたね。
5人組も隣組も私知らなくて、検索してみたら、恐いですね…。
でもそれが今も町内会などの形で残っているとのこと。
職場の全体責任も名残りですね。
日本の料理界はかなり体質が古いというのは、パリで出会った他のフレンチの料理人さんも言っておりました。
暴力もしょっちゅうあって、殴られてゴミ箱に押し込められたこともあると言っておりました。
でも今の時代、今の若い人たちには、そういうやり方はどんどん通じなくなると思います。
行き過ぎた厳しい上下関係も含め、廃れていけばいいと、私はですが、思っております。
興味深く読ませていただきました。
周りをよく考察して思いやる、わがままを言わない、という日本で美徳とされていることが会社のブラック体質に直接繋がってるし、よく考えると納得いかないまま従ってる人も多いので、鬱になったりもするんですよね・・・頑張る人ほど追いつめられるシステム、何とかしてあげて欲しいです。
フランスは日本人からすると呆れるようなことも多いけれど、慣れて自分も取り入れることが出来るようになると、一気に居心地が良くなりますね。
その女性料理人さんが、フランスでの修行期間を無事生き延びることができたみたいで、本当に良かったです。きっとどこかで活躍されていることだと思います。
日本は周りに合わせなくちゃいけないような雰囲気がありますよね。
そのせいか、おかげか、日本人は空気を読んで動くことに長けているな、敏感だな、と感じます。
そこが独特で面白いところで、日本の独自の文化もそんな国だから生まれて進化したのかな、と思います。
でも周りに合わせる必要のない、仕事に対する精神的な比重が少ないフランスに住んでみると、正直、フランスの方が精神的にはラクだな、と感じます。
日本ももっと人生の中の仕事の比重が軽くなれば良いのにと思います。
そのためには上の人が変わらなくちゃですが、なかなか変わりませんね…。
でも日本人に生まれてよかったな、とはいつも思っています。
全体責任も、トップの責任もどっちもどっちですね…。
フランスのように自分が与えられたことだけすべて自分の責任、にしておけば、他人のせいに出来ないし、人に当たり散らすこともそうそう出来ないし、さっぱりで良いのかもしれません。